六助さんの自己啓発☆5

上京そして

2003年5月


いよいよ上京です。

島を離れるカーフェリー。甲板から遠ざかる故郷を見つめます。六助さんは涙ぐんでます。無神経なほど良いお天気です。金北山(島の最高峰)に自衛隊のレーダードームがさんぜんと輝いています。フェリーに並行してカモメが飛んでいます。そのお目当ては乗客が投げるカッパえびせんです。

東京着は夕方の予定。明朝から三泊四日のセミナー。毎日9時から21時までぶっ続け。自我ぶっ壊されて自己啓発。きれいさっぱり人生リセット。の予定です(推測)。カモメにでもなったほうがまだましです。

とりあえず新潟港に着くまで2時間20分の船旅です。そのあいだ、私にちょっと前回の補足をさせてください。





セミナーに参加して万一健康上の問題が生じても、各自の責任で解決することを承諾してちょうだいね。

この書類にハンコ押さないかぎりセミナーには参加できません。ところが六助さんはすでに大金を支払済み。もう後戻りはできません。 …・と、前回書きました。ちょっとアンフェアな書き方でした。これじゃまるで 組織の詐欺にひっかかった ように聞こえます。

正確に言うと、申込書の片隅にちっちゃい字で印刷されていたんです。「お送りする書類にハンコ押さないと参加できません」というようなことがです。ですので非は、それをちゃんと読まずに大金払った六助さんにあります。飛んで火に入るなんとやら。反省してください。

「だってやー、焼鳥屋のカウンタでだよ」

いきなり申込書を書かされたんですよね。

「その翌昼までには絶対に入金しとけって言うし」

うーん、迫りすぎの社長さんはちょっとなー、と私も思います。でも、悪いとしたら社長さんですよね。組織に非はないですよね。誰が社長さんに勧誘方法を教えたのかは知りません。





まだ船上です。六助さんは二等船室です。貸毛布(100円)にくるまって身じろぎもせず横たわっています。エンジンの振動がここちよい眠りを誘います。とても寝てられません。

このすきに、もうひとつ書かせてください。佐渡島の方からご心配のメールをいただいたんです。すぐ調子に乗って書きすぎる私にアドバイスをくださいました。

集団入信?入会?が噂される方々は、佐渡ヶ島 XXXX の XXXXX を XXXX てる XXXX 業界の XXXXXX。それなりの XXXX を XXXXXX の方々です。

うひーっ。そうなんですか。その噂、私も聞いていました。やっぱりですか。それ、ちょっとやばすぎかも。どどど、どーしよー。

今のところはOKですが、今後の展開の、どこかの些細な表現がその方々の XXXXXX に触れなきゃいいけど・・・とちょっと思います。

ありがとうございます、ありがとうございます。こんな私のことを心配してくださって、ほんとうにありがたいです。これからもどうぞよろしくお願いいたします。ていうか、あれな方にはこのサイトのことあまり知られたくなかったり。ネタとシャレがわかる人だけ見てほしいー。





さて、新潟に着きました。港から新潟駅まではバスです。180円です。

駅です。立ち喰いそばを食べました。せっかくの新潟なんだからもう少しまともなもの食べたらいいのに。でも合計14万円の上京です。少しでも節約しようということなんでしょう。

食べ終わって文庫本を買いました。東京までのひまつぶしです。ヤン・ソギルさんという人が書いた「睡魔」という小説です。内容も知らずに選んだそうです。
これ、実に恐ろしい偶然でした。私も聞いてちびりそうになりました。本の内容です。作者の実体験をもとにした小説です。マルチ商法にはまって転落していく体験談だったのです。よりによってそんな本、こんなときに買わなくても。
六助さん、蒼白になりながら東京までの車中で読破しちゃいました。以下のような内容だったそうです。

お金に困っていた作者はやばいと知りつつもマルチに手を染める。日銭をもらえるのが嬉しくて友人知人親戚にへんな健康布団を押し売りして歩く。叱咤激励されながら子会員も獲得する…・。
合宿セミナーに参加したときの体験談もありました。成績の良い会員が満場の拍手で表彰されたり、態度の悪い参加者がよってたかって言葉の暴力あびせられたり、それからともかく、集団でわめいたり叫んだり。最後には血管が切れそうになるほどの感動の嵐。参加者たちは「歓喜と感涙に沸き返り、自らを縛りから解き放した」そうです。そのときの作者の気持ちは、

「気持ちは白けているのに」「涙が出てくる」

ちょ、ちょっと待ってください。マジびびります。やっぱりそういうものなんですか。

作者は在日の方です。世間の裏のことはよくご存じでしょうし、きっと苦労して生きてこられたと思うのです。それに小説家というからには、ふつうの人よりも意志が強いと思うのです。そのうえマルチの実態を知ったうえでの参加。それにもかかわらず「気持ちは白けているのに」「涙が出てくる」。

新幹線は無頓着に走っています。もう帰れません。つぎは〜うえの〜。涙がぼろぼろ出ます。着きました。東京です。





宿泊先です。組織から紹介されたホテルがあります。社長さんから宿泊割引券もいただきました。さあ行きましょう。

セミナーは夜9時まで。疲れ切ってホテルへ帰る。ロビーはほかの参加者で埋まってる。上級コースの先輩方もいっぱい。お疲れさま。こっちおいでよ。いっしょにお酒飲もうよ。今日の研修はどうだった? 感動しただろ。素晴らしかっただろ。あ、それは君の誤解だよ。よおし今日は俺たちと夜どおし議論しようぜ遠慮なくやろうその腐った根性叩き直してやる おらおらおら。(妄想)

何されるかわかったもんじゃありません。発狂しても自殺しても自分の責任です。おじけづいた六助さん、紹介されたホテルはやめて自力で探すことにしました。安いビジネスホテルを見つけました。一晩中眠れなかったそうです。





さて翌朝。いよいよセミナー会場へ向かいます。ところが。

道に迷っちゃいました。馬鹿です。あらかじめ地図を送ってもらっていたのに情けないー。思いっきり田舎者してます。
やむなく道を聞きました。そこらのお店の前で掃除していたおばちゃんにです。どちらへ行かれるんですかと愛想良く問い返されて、「XXXXXXXXX(組織名)というところです」と正直に答えました。

そのときのおばちゃんの顔を、六助さんは今でも忘れられません。親切そうな笑顔が一瞬にして固まっちゃいました。哀れむようなさげむような、その感情を隠そうと足ぶみするような微妙な顔つきに一変。やっぱり有名な組織なんですか。





めざす場所は、高級感あふれる立派なビルでした。まるごと組織の持ち物のようです。お金あるんですねー。
靴を脱いで中に入ったら、他の受講者もいっぱい来てました。あわせて100人くらい。まるで養魚池にうじゃうじゃ。一網打尽ってやつです。

さあ時間が来ました。大部屋に通されました。100人がぞろぞろぞろ。床に座りました。ふかふかの絨毯です。

窓はすべてふさがれています。
密閉されています。
電灯を落とすと真暗です。
天井からBOSSのスピーカーが4セットぶらさがっています。
後ろの壁にはアシスタントの人たちがずらりと整列。
前の壇上には講演者とおぼしき人。ビシッとスーツを決めた体育会系のお兄さんです。
マイクに向かって叫びました。









「皆さん、おはよう
ございまぁすっ!」


「ぁぁすっっ!!」

「ぁぁすっっ!!」

「ぁぁすっっ!!」

「ぁぁすっっ!!」








4セット8個のスピーカーがびんびん振動します。
すごみのある、だみ声の関西弁です。
絵に描いたようなあれの始まりです。







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